遠山翠ショートストーリー
「おっはよう、達哉」
「おっす」
新学期初日は学園の校門前で翠と待ち合わせをしていた。
そういえば少し前までは、翠に『旦那』って呼ばれてたんだよな。
俺と翠はあの日以降、『達哉』『翠』で呼び合っている。
2学期になってから、学園ではどう呼び合うか、ということが話題になった。
が、別に隠すことでもないし、そのまま『翠』『達哉』でいこうと決めた。
第八回
そんな訳で2学期が始まり、俺たちの関係は速攻でバレることになる。
というのも、始業式に行く時に
「達哉、菜月、体育館に行こう」
「おう、ちょっと待っとけ」
「うん。…って翠、いま達哉のこと、『達哉』って」
そういえば菜月の前では、こう呼び合っている姿を見せたことはなかったな。
慌てる菜月をよそに俺と翠は教室を出ようとする。
翠が、あまりに自然に俺を呼ぶのを見て菜月を含めクラスのみんなが何かを悟ったようだ。
菜月も最初は驚いた顔をしていたが、状況が飲み込めたらしい。
まぁ最近、バイト中の菜月を見る限り、薄々気付かれていたのかもしれない。
「ふ〜ん、そっかそっか」
近づいてきた菜月は俺と翠の肩を叩くと
「熱いねぇ、二人とも」
いつか、翠が俺と菜月にかけた言葉を、そっくりそのまま使われた。
こそこそ付き合うのは俺たちのガラじゃない。それに、いずれはバレることだし。
逆に考えれば、これでクラス公認のカップルになったということである。
「そうよ、アツアツっす」
そう言うと翠は開き直ったのか、俺の腕を自分の胸に抱え込む。
「こら、こんなところで」
「いーのいーの。ほら、行くよ」
夏休み後半を一緒に過ごしてみて分かったことだが、翠は結構ベタベタするのが好きらしい。
出かけ先で俺の腕を取って歩くのはもう当たり前になっていた。
俺ももちろん悪い気はしていないのだが…なんというか。
翠はこう見えて、かなりスタイルが良い。着やせするタイプだった。
一緒に海に行ったときは正直驚いた。
そんな翠に、こうも密着されると…なんというか、困る…。
が、当の翠はそれに気付いているのかいないのか。
いや、きっと分かっててやってるな。コイツは。
俺は翠に引っ張られ、おぼつかない足取りで体育館に向かった。
「はいはい、ごちそうさま」
後ろで菜月の溜息や、クラスの男子の怒声が聞こえていた。
〜あとがき〜
以上、遠山翠シナリオでした。
エンディングCGがあるとすれば、はにはにの茉理エンドみたいなものを希望。
あと、菜月が溜息をついている立ち絵も付けてください（笑）
サブキャラにしておくなんてもったいないです。コンシューマに移植されたらヒロイン昇格でしょう。
書き始めたきっかけは…やっぱり菜月シナリオでの彼女の扱いですかね。
鬼の居ぬ間に、というつもりは無いでしょうが、菜月がミラノに行ってる最中に達哉に急接近。
デートに誘いますが、結局達哉は菜月を選び、翠は涙を飲むというのが本編。
ここで終わっちゃいかんだろ、翠。ということで、書かせていただきました。
菜月シナリオの分岐という形で導入部をはしょらせてもらいました。1話分の量もやや少なめですが、ご了承ください。
ってか、本職は秋山文緒SSなんで勘弁してください。
ご意見、ご感想お待ちしております。
反応が好評であれば、瑠璃のSSコーナーも作るかもしれません。