D.C.Ⅱ SS 年越し直前SS
「その夜、義之くんが自宅に帰ってくることはありませんでした」
「いや、帰ったから！」
茜のいい加減なナレーションに突っ込む俺。
女の子相手だから手が出せないのが残念だ。
大晦日、年明けを目前にして俺達は本島の神社に年越し初詣に来ていた。
いまの話題は今年のクリスマスパーティについてだった。
確かに俺は小恋を背負って家まで送ったが、そこで何をどうしたということは
一切ない。
「くそー、俺も参加したかったぜ」
本気で涙を流す渉。クリスマスは戯矢利尊先生と二人きりだったらしい。
しかも夜明けのコーヒーまで共にしたそうだ。
「俺は俺で有意義なクリスマスを過ごしたからな。言うことはない」
杉並は一人納得している様子。こいつ、クリスマスは何やってたんだ？
「はい、みんな。甘酒もらってきたよ～」
小恋と杏が神社で振る舞っている甘酒をもらってきた。
「ありがとう。ふぅ、あったまる～」
茜、おばさんくさいぞ、それ。
などと思ったものの
「ふぅ～」
俺も一口飲んだら、つい溜め息が出てしまった。
「義之くん、年寄りっぽいなぁ」
お前に言われたくないわ！
「そろそろ並びましょ」
杏がそう言い、いつもの6人がいることを確認すると、境内の列に向かう俺たち。
すでに長々と出来上がっていた列の最後尾につく。
少しして
「あ、除夜の鐘が鳴り始めたね」
ごーんと重くい音が響く。
水を打ったように静かになるが、それも一瞬のことだった。
すぐに辺りは喧騒に包まれる。
「あー、これで今年も終わりなんだなぁ」
渉がしみじみ呟いた。
「そうね、今年もあっという間だった」
「うん、でも今年も楽しかったよ」
茜に小恋が頷いた。
卒パで争ったり、かと思えばそのすぐ後のクラス替えで全員が同じ
クラスになったり、と波乱万丈な一年だった。
あっという間だったのは、月並みだが充実していたからなのだろう。
来年もなんだかんだでこのメンツで過ごすことになるのかな。
「ふむ、今年もあと1分だ」
腕時計を見た杉並がそう言う。
杉並の腕時計だ、世界水準とまったく同じ時間を刻んでいるのだろう。
「じゃぁカウントダウンの準備だね」
盛大に騒ぐわけにもいかないので、俺たち6人で輪を作る。
その中心に杉並が自分の時計を差し出した。
「49…48…」
「いや、まだ早いだろ」
先走りすぎる小恋に突っ込みを入れ、カウントダウンが中断。
というか、いくらなんでも残り50秒近くからは数えないだろ。
「え、え？どうして？」
分かってない小恋。
みんなが苦笑する。小恋のこういう所は一生治らなそうだ。
残り10秒。それぞれが目配せする。
「10…9…8…」
「わわ」
一人だけ出遅れたのは誰だか言うまい。
さて、今年もこれで終わり。新しい年が幕を開ける。
「3…2…1…」
来年はどんな年になるのだろうか。
～あとがき～
最近、小恋さんが大活躍です。
本当は年越し直前にアップするつもりでしたけど、冬コミで買ってきた
オーガストのCDが年越しカウントダウンを収録しているとのことなので
そっちを優先させていただきます（笑）
んじゃ皆様、良いお年をお迎えくださいませ。
2006.12.31