D.C.Ⅱ SS ホワイトデーSS
げほげほげほ。
うー、調子悪ぃ……。
3月に入って調子を崩し始め、今週ついに陥落。
昨日、13日から学校を休んでいる。今年の風邪は長引くなぁ。
3月14日、晴れ。
こんないい天気なのに今日も俺は寝込んでいた。
そういえば今日はホワイトデーだっけ。
週末、多少なりとも元気だった頃に商店街で買っておいたお返し。
音姉と由夢はともかく、雪月花に渡すタイミングがなくなっちゃったな。
と、携帯がメールの着信を知らせる。
小恋からだった。
『これから杏と茜と一緒にお見舞いに行くね～』
30分後、雪月花が揃い踏みでお見舞いにやってきた。
上着を羽織って玄関に出たが『義之は横になってていいよ』と
小恋に言われたので厚意に甘えることにした。
「わー、義之くんのお部屋に入るのって初めてかも」
「私も初めてね」
茜と杏は部屋に入るなりキョロキョロし始める。
「私も結構、久しぶりかも」
「俺も部屋にこれだけの人数を呼んだのも久しぶりだ」
部屋に入るのは音姉と由夢、さくらさんくらいだ。
「とりあえず適当に座ってくれ」
俺は小さな折りたたみのテーブルを出す。
「と、クッションが足りないな」
普段からこの部屋で何かするということが少ないのであまり
物を置いていない。
「いいわ、私はこっちに座るから」
「そっか、悪いな」
俺がベッドに入った後、杏がベッドに腰掛ける。
「ふふ、一緒に寝てあげようか？」
いつもの何かをたくらむような表情で杏。
しかしその視線は明らかに小恋を追っている。
小恋も当然のように引っかかるわけで。
「あ、杏！風邪うつっちゃうよ！」
少し頬を赤くしつつ慌てる小恋。
「別に。義之にうつされるなら構わないわ」
相変わらず杏のセリフもどこまで本気なの分からない。
「それとも小恋ちゃんが添い寝してあげる？」
「えぇ！？そ、そんな。義之となんて」
悪ノリする茜に、更に顔を赤くする小恋。
「その辺にしとこうな、茜、杏」
「え？え？？？」
小恋、もう少し学習した方が良いと思うぞ。
ひとしきり遊ばれた小恋が落ち着いてひと段落。
「で、まだ風邪は治りそうにないの？」
見舞い用にと買ってきたリンゴをむきながら小恋。
「まだ身体がだるくてな。のどの調子も今ひとつ」
「ちゃんと栄養のあるもの食べてる？」
「あぁ、さくらさんが面倒見てくれてるし、音姉と由夢も来てくれてるから」
「そっか」
ちょっと残念そうな表情をする小恋。
いや、そこでそんな顔しないでくれ。杏と茜が喜ぶから。
「げほげほ……っと、失礼」
矢継ぎ早に質問されるもんだから、のどに来た。
「そうね、まだ声が変だしね」
杏は枕元に置いといたスポーツドリンクをコップに注ぐと俺に手渡してくれた。
「さんきゅ」
なんだかんだで杏が心配してくれているのが嬉しくもあり。
「弟く～ん、誰か来てるの～」
ちょうどその時、階下から音姉の声が聞こえた。
音姉も学園を終えると、すぐに帰ってきてくれたのだろう。
今朝なんかも俺が学園に行くように言わなければ、一日中面倒を見る気で
いたからな。
って、ちょっと待て。冷静に考えてる場合じゃないぞ。
男の部屋に女の子が3人も。
かなりまずいんじゃありませんか？
「あらら、音姫先輩が来ちゃったね」
どこか楽しそうに話す茜。
これから起きるであろうことを既に予想しているのだろう。
軽快に階段を上ってくる音姉。
んで、ノックもせず俺の部屋のドアを開けるわけですよ。
「茜」
「おっけ」
きゅぴ～んと音がなった気がする。
杏が茜に目配せをすると、二人が俺のベッドに飛び込んできた。
がちゃり。直後にドアが開いて
「おとうとく……」
音姉、絶句。
両手に花。俺の右側に杏、左側に茜。
それぞれ俺の腕を抱きかかえるようにしている。
ベッドの側には甲斐甲斐しくリンゴをむいている小恋。
状況証拠のみで有罪が確定した模様。
ばたん。
テープを巻き戻すかのようにドアが閉じられた。
無言で立ち去られるのが一番辛い。
トントントンと階段を降りていく音が聞こえ、少しした後に玄関が閉じられるのが分かった。
もう、何を言ってもダメな気がする。
俺はため息をつくと両隣にいる二人に目をやり
「お前ら、風邪がうつるぞ」
そう言ったものの、
「その時は義之に面倒見てもらうわ」
「私も～」
悪びれた素振りなど微塵も見せない杏と茜。
それをジト目で見ている小恋。
お願いですから包丁の先をこっちに向けないでください。
結局、音姉を放置したまま日が暮れた。
「あ、そろそろ帰らなくちゃ」
小恋が時計を確認して言った。
「それじゃ私たちもお暇しようか、杏ちゃん」
「うん」
「あ、待ってくれ」
ごそごそと後片付けを始める3人を呼び止める。
俺は起き上がると、机の上に置いておいたホワイトデー用の
お返しを手に取った。
「安いもので悪いんだけど。それと今日はありがとうな」
俺はお返しを3人に手渡した。
みんな『ありがとう』と喜んでくれる。
14日のうちに手渡せてよかったと思う。
俺は3人を見送るとため息をついた。
「さて、これからが本番だな」
音姉への弁解を考えながら上着を着込むと朝倉家に向かった。
一難去って、また一難。
望んでもいない春の嵐が朝倉家でも吹き荒れた。
～あとがき～
明らかに「ホワイトデー」はオマケですねぇ。
大急ぎで書いたので、あまり良い出来ではないですね。猛省。
ホントはこの後、音姉にフォローしにいくシナリオがあったのですが
時間の関係上カットしました。
2007.03.14