D.C.U SS お姉ちゃんのリボン その6

「うくっ」
妙な息苦しさを覚えて私は眠りから覚める。
何かにのしかかられているように全身が動かない。
そして、首を締め付けられている感じ。
どうにか私が目を開けると、馬乗りになったお姉ちゃんの姿があった。
私は搾り出すように声を出す。
「お……おねえ、ちゃ……」
お姉ちゃんが私の乗りかかって紐のようなものを引っ張っていた。
これは、リボン?
お姉ちゃんが愛用しているピンクのリボンが自分の首筋から伸びていた。
なぜか辛そうな表情のお姉ちゃん。
なんでこんなことになっているの?なんでそんな顔をしているの?
お姉ちゃんに聞こうにも、この状態じゃまともに声など出ない。
そして無慈悲にもリボンが更にきつく締め上げられる。
「かはっ……」
痛みと息苦しさで意識が飛びそうになる。
「ごめんね、由夢ちゃん」
私が最後に聞いた言葉、お姉ちゃんの謝罪だった。



がばっ。
私は上体を起こした。
周りをきょろきょろ見回す。時計は……午前10時を指していた。
動悸が治まらない。変な汗もかいている。
私は両腕を胸の前に持ってきて動かしてみる。
うん、動く。
首に手を当ててみる。汗はかいているものの、別に痛くはない。
私は起き上がると鏡台に向かい、自分の姿を確かめた。
どこも異常はない。怪我をしていたり傷もないようだ。
「ふぅ」
安堵して私はベッドに腰掛けた。
嫌な夢を見た。まさか、お姉ちゃんが私に手をかけようとしていたなんて。
いくらなんでも冗談が過ぎる。文字通り、夢見は最悪だった。

トントン。
「由夢ちゃん。もう起きた?」
しばらくぼーっとしているとお姉ちゃんがノックしていた。
「!」
私はおねえちゃんの声にビクっと震え上がる。
いくら夢の中とはいえ、ついさっき私に手をかけた相手だ。
冷静に対応できる方がどうかしている。
「う、うん、いま起きたところ」
多少どもりながらも返事を返した。
「入っていい?」
「どうぞ」
がちゃり。
「おはよう、由夢ちゃん」
普段と変わらない表情でお姉ちゃん。
当たり前だ、さっきのは夢なんだから。
「由夢ちゃん、今日の午後が空いてれば商店街に行かない?」
なんのことはない、お出かけのお誘いだった。
「うん、行く」
私は二つ返事で了承した。


ところかわって商店街のデパート。
なんでもバーゲンセールをやっているようで、お姉ちゃんの狙いもここにあった。
最初にお姉ちゃんのリボン選びに付き合う。
お姉ちゃんは新しいリボンを見繕って購入していた。
何本買ったかは聞かなかったけど、1万円を出して小銭しか返ってこなかったのをみると、いったいいくらぶん買ったんだろうと疑問に思う。
いや、きっと聞いちゃいけないことなんだろう。

「お待たせ。じゃぁ次は由夢ちゃんのを見に行こう」
会計を済ませたお姉ちゃんがそういったので私も頷く。
「うん、そうだね」
私服の時に身に付ける首飾りを見て回る。
どれどれ?最近はどんな色が流行っているんだろう。
私がいくつかの首飾りを手にしていると、その横でお姉ちゃんが
「わぁ、この色可愛いね」
黄色い小さな鈴の装飾が付いた首飾りを手にとって眺めていた。
留め金でとめるのではなく、スカーフのように巻きつけるタイプだった。
「これなんかどうかな、由夢ちゃん」
さっそく私に勧めてくるお姉ちゃん。
「うん、似合うかな」
私も嫌いな色ではなかったので、試着してみる。
「あ、私がつけてあげるよ」
言うが早いか、お姉ちゃんは私の首に手を回した。
いくら姉妹だからとはいえ、お店でこういうことをされると少し恥ずかしい。

と、お姉ちゃんの手が突然止まる。
「お姉ちゃん?」
目の前にあるお姉ちゃんが不思議な顔をしていた。
「ごめん……ちょっと待って……」
あ、これはきっとくしゃみしそうなんだ。
間もなくして
「くしゅん!」
その反動で同時にきゅっと、私の首が絞まった。

「あ、ごめんね、由夢ちゃん」



〜あとがき〜
サスペンスなのは最初だけであとは普通の仲睦まじい(?)
姉妹の図でした。
たとえイタズラだとしても、音姉は由夢の首を絞めたりしないでしょう。
だからこういうオチにしました。

花粉症の時期だから書いてみたというのが一番の理由。


2007.03.07

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