D.C.Ⅱ SS クリスマスっぽいの Vol.1
「連絡は以上。今日はここまで」
先生が名簿を閉じる。
「起立」
委員長の号令で今日の授業が終わる。
今日もお勤めご苦労さん、と俺は凝った肩をほぐすように揉んだ。
「義之」
「ん？」
隣の席の杏に話しかけられたので頭をそちらを向ける。
「今年のクリスマスはどうするの？」
「んー、別に何もしないんじゃないか？」
そういえばもうそんな時期か。
特に彼女がいるわけでもなく、また彼女も今すぐ欲しいとは
思っていない俺は曖昧に答えた。
「良かったら私たちのクリスマスパーティに参加しない？」
「『私たち？』」
俺が聞き返すと杏は頷いた。
「えぇ、私と茜と小恋。それと参加するのであれば義之の4人ね」
「なんか居心地悪そうだな」
女の子3人の中に男の俺一人。
まぁ気心知れてる連中だから、分け隔てなく接してくれるとは思うのだが。
「クリスマスに女の子3人とパーティなんて、最高じゃない？」
「いや、もしそれがバレたら最悪の結果を迎えかねん」
「ばれたらって、由夢さんとか？」
「ま、まぁそうだな」
俺は言葉を濁した。まぁ今に始まったことではないのだが。
由夢本人は否定しているものの、そのブラコンっぷりは明らかだった。
俺もそれが原因で雪月花、特に雪と花にからかわれる。
杏は唇に手を当て、何かを考える仕草をすると、
「えっと、ぶっちゃけていい？」
「どうぞ」
「パーティ会場を提供して」
「はい？」
何を言われたのか、一瞬理解できなかった。
『パーティ会場』なんて借りられる場所を俺が知ってるはずもない。
が、会場とはいえない場所に思い当たる節が一つ。
「つまり、うちを使いたいと」
「そう」
肯定。表情からするに冗談とかではないのだろう。
「女の子3人に囲まれて。ハーレムね」
ニヤリ笑う杏だが、俺が笑ってられるはずもなく。
「っていうか、朝倉姉妹に殺される」
そんなことをすれば、音姉も由夢も黙ってはいないだろう。
さくらさんはOKしてくれるだろうが、結末は既に見えている。
『楽しいけど後が怖いクリスマス』と『楽しくないクリスマス』を天秤に掛けてみる。
ものすごい勢いで『楽しくないクリスマス』の方に傾いた。
ふむ、ここは杏には悪いが断らせてもらおう。
「悪いな杏、やっぱり俺は……」
「杏ちゃ～ん。場所どうなった？」
一度、表に出ていたのだろう茜と小恋は教室に入ってくるなり俺たちの
ところにやってｋる。
「義之が渋ってて。茜、お願い」
「らじゃー」
茜は俺の後ろに立つと肩に手をかけ顔を近づけてくる。
「義之く～ん、お・ね・が・い」
「み、耳元でしゃべるなぁ！」
「義之くんが場所を提供してくれたらぁ、私が素敵なクリスマスプレゼント、ア・ゲ・ル♪」
茜はそのまま俺の首に手を回してくる。
「や、やめれ」
背中には男の俺にはあり得ない、柔らかいものが。
あの、茜さん。それ以上は困ります！
「あ、茜～。その言い方、なんだかはしたないよ～」
小恋はおろおろするばかり。っていうか止めてくれ。
「えー、別にいいじゃない。美味しい料理、食べさせてあげるだけだもん」
その体制のまま小恋に反論する茜。
「え？そ、そうなの！？」
「あらら～、小恋ちゃんってば何を想像しちゃったのかな～？」
「え、え、えうぅぅぅ」
いつものことだが小さくなる。というか、そろそろ学習しようぜ小恋。
そんな小恋を見ながら笑う茜はもう一度、顔を近づけてきた。
「『月島小恋』っていう美味しいお料理。義之くんも食べたいよね～」
「『ね～』とか言うな！」
俺は茜の腕を解くと、ため息をついた。
想像力逞しい小恋は真っ赤になって更に小さくなっていた。
「義之くんってばつれないなぁ。女体盛り、いいじゃない」
「良くねーよ。っつーか、そういうこと堂々と言うなよ」
「は～い」
ペロと舌を出した茜は俺から離れると杏の机に寄りかかった。
「で、実際のところ本当にダメなの？」
「ダメじゃないと思うけど。俺の身の保障がない」
俺の冬休みが丸々なくなる可能性が非常に高い。
「じゃぁ、朝倉さんちも一緒にやればいいじゃない」
理由を話してないのに『朝倉さんち』という単語が出てくるあたり
茜も分かってて言ってるのだろう。
「もっとダメだと思う」
音姉は『仕方ないなぁ』と言ってくれると思うが、内心はどうか分からない。
由夢は間違いなくあからさまな態度で示してくるはずだ。
というか、男俺1人に対して女5人なんて、肩身が狭くて落ち着かん。
「愛されてるんだね、義之くん」
「言いようだな」
束縛されている、と言い換えることも出来るだろ。
「とりあえず時間くれ。週明けには答えを出す」
「仕方ないわね」
杏は渋々うなづいた。
「素敵な小恋ちゃん、用意してるからね」
「茜、しつこい！」
～あとがき～
次回予告！
ということで雪月花とクリスマスを過ごすことになりそうな義之。
さて、結局パーティ会場はどこになる？
１．杏の希望通り芳野家で
２．広くて色々できそうな雪村家（誰も呼んだ事ない設定）
３．意表をついて月島家
一応、このどれかにしようかと。
次は週明けに短いの書いて、週末にまた長めなのを用意します。
リクあったらどーぞ。
っていいうか、そんなペースで書いてたら仕事できんがな。
打ち切れたらスマソ。
2006.12.08