D.C.Ⅱ SS クリスマスっぽいの Vol.2
『それじゃ義之くん、週末お買い物に付き合って』
茜にそう言われ、いつの間にか決定していた俺の週末。
「うー、さぶ」
吹き付ける風につい独り言を漏らしてしまう。
生憎の曇り空。天気予報では今日は一日中こんな天気だと言っていた。
雨が降ることも懸念したが、どうせ荷物持ちだしな。
傘を持っていったら邪魔になるかもしれない。
俺は余計な荷物は持たずに家を出た。
待ち合わせ時間の11時。
時間通りに到着したのだが雪月花は既に待ち合わせ場所にいた。
向こうも俺に気付いたようで、茜と小恋は小さく手を振っている。
杏は相変わらずの無表情だった。
3人と合流すると早速行き先を聞いてみる。
とりあえずこの寒い場所から早く離れたい。
「で、どこに買いに行くんだ？」
「うん、まずはそこのデパート。割引券があるんだ」
茜がデパートを指差して説明する。
「予算は義之持ちで」
「なに！？」
杏がぼそっと呟いたのに俺は吹き出した。
「冗談よ」
「杏が言うと冗談に聞こえない」
真顔で言うものだから冗談に聞こえないのである。
「別に冗談で済ませなくてもいいんだけど？」
「いえ、冗談にしておいてください杏様」
口で杏には適わないことを再認識した。
『クリスマス用品特集！』
玩具売り場ではクリスマスパーティ用のグッズが一角を占めていた。
「で、何を買うんだ？」
「パーティーグッズ」
淡々と応える杏。
「漠然としすぎだ」
「まぁまぁ、面白そうなのがあったらカゴに入れちゃって」
茜は気に入ったものをカゴにひょいひょいと入れていく。
1回使いきりのものから、また来年にも使えそうなものまでピンキリ。
予算、考えての行動だろうか、少し不安だ。
俺はお約束の『ひげメガネ』とか『マゲかつら』でも入れようとしたが
「センスないよ、義之」
小恋に一蹴された。小恋に言われたのが悔しいが、俺も後でそう思った。
結局は飾り付けに使うものを中心に買う。
買い物を終えると時間は昼をちょうど回ったところだったので、
喫茶店で軽く昼食。
女の子3人に囲まれて喫茶店に入ったものだから、周囲の視線が
痛すぎて泣けたのはまた別の話。
昼食を終え、デパートで買えなかったものを探しに次の店に向かう。
デパートを出ると、ぱらぱらと雨が降り始めていた。
「うわ、降ってるじゃないか」
俺は恨めしげに天を仰ぐ。
「義之、傘持ってないの？」
「みんな持ってるのか？」
ぐるり一堂を見回す。
「私は持ってきてるよ。杏と茜は？」
小恋はバッグから折り畳み傘を取り出している。
「持ってるわ」
「持ってるよ～」
どうやら雪月花は全員持ってきているようだ。
「しょうがないなぁ。じゃぁ義之くん、誰かの傘に入れてもらって次行こ」
「誰かって言われてもな。せっかくデパートにいるんだからそこで買っても」
「それだともったいないでしょ。お化けがでちゃうよ？」
ふむ、まぁ妥当なところだな。
俺も荷物があるから傘をさすのもめんどくさくはある。
「ったく。じゃぁ、誰か入れてくれ」
俺は3人を見る。が。
「せっかくだから義之が選んで」
杏がこともなげに言う。
「なんで俺？」
「あ、それ面白そう。義之くん、誰を選ぶかな～？」
茜さん、何か違う期待をしていませんか？
「べ、別に私は一緒してもいいんだけど」
小恋が小さい声で言ったのが聞こえた。
「じゃぁ義之くん、誰か決めてね」
笑顔で茜、ガン無視かよ。
さて、誰の傘に入れてもらおうか。
～あとがき～
誰と一緒に帰りましょうかね～♪
１．聞かなかった振りを装いつつ小恋
２．こんなことを言い出した杏
３．明らかに楽しんでくれやがる茜
なお、杏と相合傘して帰ったSSは過去にも書きました。
電撃姫に送って落ちたやつだけどな。
2006.12.15