体育祭　午後の部（後編）


棒倒し（男子）

「杉並がいないと不利なんじゃないか、義之」
「なに、あいつは元々ガテン系は向かん。ちゃんと考えているさ」
「へっ、足元すくわれるぜ。この競技もB組が貰ったぜ」
悪役っぽいセリフが板についてきた渉はそのまま去っていった。
「A組ってポジションと対戦順に感謝、だな」

1回戦：B組vsC組

「「「白河さんのためなら、え〜んやこ〜ら♪」」」
妙な掛け声でC組陣地に突貫するB組男子。

「団体系は無敵だね、B組」
茜と杏は変なところで感心していた。
「でもそろそろA組も何かしてくるころだわ」
「そうだよね、杉並君あたりが何か仕掛けてるかも」
そうこう言っているうちにC組の棒が傾いていく。
「あ〜あ、うちのクラス負けちゃった」
「大丈夫、まだ分はあるわ」
「だといいけど」
杏と茜は次の競技に向け、A組に向かった。


2回戦：A組vsB組

俺はクラスのみんなを集めると、作戦を言い渡した。
「全員、攻めに回ってくれ」
「でもいいのか、こんな仕掛け」
「すべては杉並の責任だ。気にすんなよ」
「そ、そうだな。ははは」
ちょっとしたイカサマにたじろぐクラスメートを宥める。
そう、何かあってもすべて杉並の責任にすればいい。
「よし、行くぞ！」
「「「おう！」」」

「あいつら、全員でせめて来るぞ！？」
攻撃一本槍で攻め込んできた俺たちにＢ組は戸惑っている。
しかし
「白河に褒めてもらうぞー！！！」
渉の一声で連中の目の色が変わった。
乱れていたチームワークがまとまり始める。
だが遅い。
俺たちはＢ組の棒を全員で倒しにかかる。
一方、攻めに回った渉の悲鳴が後ろから聞こえる。
「き、汚ねーぞ義之〜！！！」

Ａ組の棒はＢ組の棒よりかなり短い。見た目、半分くらいだろう。
だがこれは、短いのではない。半分が地中に埋まっているのである。
掘り出して持ち上げない限り、棒が倒れることはないはずだ。
手が出せない渉たちをよそに、A組はB組の棒をあっさり倒した。
わずか数分で棒を地下数メートルまで沈めた謎の技術は
杉並の無駄な努力の賜物である。


3回戦：A組vsC組

A組の棒は埋まりっぱなし。
もちろん不倒。


A組の棒を掘り出すため、15分間運営が中断。
杉並が指名手配される。


二人三脚（男女問わず・変則チーム編成）

義之（A組）＆杏（C組）
小恋（A組）＆茜（C組）
渉（B組）＆男子D（C組）

「なぁ義之、ここは流れ的に俺と月島じゃねーの？」
なんか勝手な妄想を抱いているヤツが一人。
「手遅れだ。小恋は茜と組んでるぞ」
「じゃ、じゃぁ白河。俺は猛烈に白河を所望する！」
「同じクラスだとペアを組めないんだよ、知ってるだろ」
この競技はエキシビション的な競技なので、同じクラスの
組み合わせだけは許可されていない。
「義之〜、俺も女の子と二人三脚してぇよ〜」
「黙れ」
情けない声を上げる渉を制すと、俺は杏の元に向かった。
ちなみに俺は杏から直々の『ご指名』である。

「杏、そろそろ足結ぶぞ」
「了解」
杏のそばでしゃがむと、俺の右足と杏の左足を結んだ。
「こんなもんだな」
ふと、目の前にある杏の太ももに目が行ってしまう。
風見学園は未だにブルマを使用している、数少ない学校だ。
そんな俺の視線に気付いた杏の口元がにやり。
「義之、ケダモノね」
「う、うっさい！」
図星を指されうろたえた。
「別に減るものじゃないし、見たかったらいつでも言って」
「言えるかそんなもん！」
「そう？残念」
なにが残念なんだか。ったく、調子が狂うじゃねーか。

しかし客観的に見て、俺と杏の身長差は少しネックだな。
こうして二人で並ぶと、その差は顕著だ。杏の背は俺の肩にも届かない。
「どうしたの？」
俺が杏を見ていたことに気付いたのか、彼女は顔を上げた。
「や、こうしてみると結構身長に差があるなって」
ちょうど良い位置に杏の頭があるので、ぽむと乗せてみる。
一瞬、杏がむっとした気がしたが、すぐに無表情に戻る。
「大丈夫よ、いざとなったら義之を巻き込んで転ぶから」
「それ大丈夫じゃないです」

結果。

まぁまぁだった。しっかり走ったし、転びもした。
それでもお互い、たいした怪我もなく完走。
小恋と茜も健闘。
渉は男同士がよほど嫌だったらしく、まったく息があっていなかった。
中にはこういうエキシビション的な競技も必要だろう。
結果じゃない競技もないと盛り上がらないからな。

最後のリレーを残し、順位はこうなっていた。
A組≧B組≧C組



〜あとがき５〜
ほとんどの競技が終わり、残るは全員リレーのみ。
最後は杉並の仕掛けがついに炸裂！？
全員リレー前編は16時アップ予定。