D.C.U SS 体育祭SS その6

体育祭 最終競技 全員リレー(前編)

暫定順位
A組≧B組≧C組

けっきょく、得点は僅差でこの競技に勝てばどのクラスも優勝の可能性が
残されていた。
「ぶっちゃけ、コレだけで勝負しても良かったんじゃね?」
「それは結果論よ。それに思ったよりB組も頑張ってるし」
俺と杏はA、C組で潰しにかかっているB組が思いのほか粘っていることに
驚いていた。
渉の存在はともかく、それほどまでに白河さんの存在が脅威だということだ。

「杉並はまだ戻ってこないか。あいつ、アンカーにしとくか」
俺はメンバー表を少しいじって実行委員に提出した。
この土壇場で走者の順番を入れ替えられるのがこのリレーの
いいところだ。ま、あとはなるようになれ、だな。
杉並が変な仕掛けを持ってくることは間違いない。
生徒会役員とみられる生徒がコース等をチェックしているが
目的のものを探しているというよりは、警戒しているといった動きだ。
おそらく杉並はまだ捕まっていない。そう直感した。
『出場する2年生は入場門に集まってください』
2年の召集がかかった。
「よし、行くか」
最後の決戦に向け、気合を入れなおした。

全員リレー。その名の通り、クラス全員が走者となるリレーである。
うちのクラスの第一走者は小恋。
ジャンケンで負けたせいで、重大な責任を背負っての第一走者である。
クラスは40人いるので、最初から順位が悪くても後半巻き返せばいい。
まぁ、序盤からリードしていればそれに越したことはないのだが。
「位置に付いて、よーい」
パァン!
号砲一発。全員リレーがスタートした。
案の定、小恋はやや遅れ気味にスタート。
というかピストルの音を怖がってたなあいつ。
先頭に男子を持ってきたC組が1位、それにB組、A組と続く。


中盤まではそのままの順位を維持するが、17人目で順位が動く。
男子を中盤に連ねたB組がC組を一気に追い抜き、1位に躍り出る。
「待たせたな、桜内」
ここにきて、ようやく杉並が戻ってきた。
「仕掛けは?」
「ふっ、愚問」
「おーらい」
「まずは小手調べだ」
杉並が手元のスイッチを押す。
その瞬間、B組とC組の走者が同時にバトンを落とした。
「……」
お前、どのタイミングでトラップ張ったんだ?


さて31人目の走者である俺の順番がもすうぐ回ってくる。
杉並に持たされた、何かのスイッチを片手に。
明らかにイカサマなのだが、同じ31人目の走者である茜が侮れない。
現在の順位はA組、C組、B組の順。差はそれほど大きくない。
29人目の走者が出る。
トラック半周で1人のため、俺はコースに立った。
続いてC組の走者も出たため、茜もコースに出てきた。
「よろしくね、義之くん」
「何がよろしくだ、遠慮しないぞ」
「ふふ、いいわよ〜だ」
何かたくらんでる。俺は直感した。

うちのクラスの前走者の女子が最初に走ってくる。
「お先」
バトンゾーンの浅いところで待っていた俺は、バトンを受け取った後
追い抜きざま、茜にわざと声をかけて走り出す。
「やだ、ちょっと待ってよ」
さりげなく足をかけてくる茜をジャンプしてかわす。
この程度、甘い。
「あらら、残念」
と、着地して加速しようとした矢先、手にバトンの感触がないことに気付いた。
いけね、勢いあまって落としたか?
俺はとっさに振り向くと、やはりバトンを受け取った地点に落ちていた。
いや待て。俺は確実に受け取った。
そのあと茜に見せ付けるようにして走り出したはずだ。

そばにいた茜が手首を返すと、落ちていたバトンが浮き上がり茜の手元へ。
「ごめんね、義之くん。私、手芸が得意なんだ♪」
いつの間にかA組のバトンには細い糸が絡み付いていた。
と、得意とかそういうレベルの話じゃねぇ。
そして茜は手にしたバトンを逆方向に放り投げる。
B組の30人目の走者も迫ってきている。まずい。
「じゃ、お先♪」
俺がバトンを取りに戻るすれ違いざま、茜にかけた言葉がノシ付きで
返ってきた。
「くそ」
俺はコースを逆走する。
「桜内、今だ。ボタンを押せ!」
杉並の声が上がる。俺はとっさにボタンを押した。
「きゃあ〜!!!」
俺の後ろで女の子の悲鳴が上がった。
しかし悲鳴を上げた当人の姿が見えない。
代わりに、地面に大きく開いた穴だけが存在していた。


〜あとがき6〜
茜はどうなってしまったの?
全員リレー後編は間もなくアップ!
まだ続いてるのかよ!?って突っ込みはもう少し待ってください。


2006.10.17 AM 16:07

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