月は東に日は西にSS・結先生が行く
雲ひとつない快晴の日曜日。
「はぁ、なんでこんなことになってしまったんでしょう」
今日ため息をついているのは結先生。
ガララララ・・・。
「いらっしゃいませ」
結先生が入ったのはどこにでもありそうな個人経営のドラッグストア。
自動ドアから店に入ると店員が元気な声で出迎えます。
結先生はその店員の顔を見ることなくあのコーナーへ向かいました。
「面白そうですね」
トランプで遊んでいる天文部の面々を見て、つい声をかけてしまった結先生。
「結先生も一緒にどうですか？」
なんて天ヶ崎さんの誘いに乗らなければ・・・。
結果、結先生は惨敗。罰ゲームを受けることになりました。
当初、美琴ちゃんと同じようにHなビデオを買ってくるという提案もありましたが、
そんなことをしたら結先生が誘拐されかねないので却下。
「えっと、じゃぁアレをお願いしていいですか？」
今回の勝者は弘司君。ここまで無敗の強者です。
そして、結先生は水虫の薬を買いに行くことで落ち着いたのです。
「やっぱり恥ずかしいです」
女性はこういうものを買いに行くのは恥ずかしいのでしょうか？
筆者は男性だから良く分かりませんが。
少なくとも、男性が買いにいくのは抵抗は少ない気がします。
狭いスペースに所狭しと並べられた薬品の数々。
この中から水虫の薬をピンポイントで探すのは苦労しそうです。
「店員さんに聞きたくないなぁ」
タイミングの悪いことに、いま店にいるのは全て男性店員。
女性店員なら少しは安心して聞けるのに。
店を探し回ってやっと見つけた目的の品。
しかし、ここで問題が発生します。
「と、届かない」
ご存知、結先生の身長は140cmに満たないものです。
手をのばしても届く範囲はせいぜい170cmまで。それより高いところは届きません。
誰かに頼めばあっという間に手に入るでしょう。
ですが、結先生のプライドとか世間体とか。その辺がぶつかり合います。
結先生、葛藤中。
そこに天の助けでしょうか。
丁度同じ物を買いに来た中年のおばさんが。
このチャンスを逃す手はありません。
結先生は遠慮がちに声をかけます。
「あの、すいません」
「はい？」
声をかけられたおばさんは、しゃがんで結先生の視線に合わせます。
「どうしたの？」
にっこり微笑むおばさん。
「えっと、それと同じ物を買いたいんですけど、届かなくて」
たどたどしい口調で話す結先生。その言動は外見と同様、子供そのものです。
実際は恥ずかしかっただけなのですが。
「これね、はい」
おばさんは同じものを手に取り、結先生に渡します。
「あ、ありがとうございます」
結先生は軽く頭を下げました。
「お父さんのお遣い？偉いわね」
そういって結先生の頭を撫でるおばさん。
子供がお遣いにきたと勘違いしているようです。無理もありませんけどね。
「気をつけて帰るのよ」
結先生に小さくてを振って、おばさんは去っていきました。
「複雑です・・・」
無事、目的のものを手に入れることが出来ましたが、納得いかない結先生。
「やむを得ません・・・」
ここまできたら、子供で通そう。そう思った結先生でした。
翌日・・・。
「というわけで結先生。例の物をお願いします」
弘司君が申し訳なさそうに結先生に切り出します。
バッグから包みを出し、テーブルの上に置く結先生。
「うん、間違いないですね。ありがとうございます、結先生」
品物を確認して頭を下げる弘司君。
「結先生、これが置いてある棚に届いたんですか？」
直樹君が結先生に尋ねます。
「高い所にあるって知ってたんですか！？」
憤慨する結先生。
「えっと、まぁ、その・・・」
言葉を濁す久住君。
「親切なおばさんに助けてもらいました・・・」
たまたま買い物に来たおばさんに助けられたこと、子供のお遣いと間違われたことなどを
みんなに話す結先生。
「大変だったんですね」
結先生の頑張りをねぎらう美琴ちゃん。
「ところで広瀬君って水虫なの？」
美琴ちゃんは今度は弘司君に話し掛けます。
「うん、これからの季節は辛くてさ」
本当に嫌そうな顔をする弘司君。
夏は水虫の季節らしいです。
あとがき
本当は、コンドー君でも買いに行かせようと思ったのですが・・・。
さすがにセクハラだと思ってやめました。