秋山文緒SS番外編文緒inロータス
第6話 人とか犬とか
「私の言葉がわかる？」
「あら、不思議。わかります」
ロータスはキョトンとした表情で私を見つめる。
どうやら、本当に言葉が通じるようになったらしい。
「えっと、あなたはロータスでいいんだよね？」
「ええ、なぜこうなったかは知りませんけど」
良かった。ホントに通じるみたい。
「ほっ。成功してよかったです」
結先生が聞き捨てならない台詞を言った気がしたが、この際どうでもいい。
「それより、これからどうしますか？」
完全に落ち着いたロータスが話を進める。
「とりあえず、学園に行かないとマズイ時間よね」
時計を見ると始業10分前。寮からは5分程度で行けるので、実質5分か。
「ロータス、早速だけど制服に着替えてくれる？」
時間がもったいないので、私はロータスに指示を出していく。
「えっと、勝手が分からないのですが・・・」
私が始めて犬になったときのように、ロータスも人間の感覚が良く分からないらしい。
さっきからベッドに座りっぱなしだったのはそのせいかもしれない。
「じゃぁ、結先生。着替えを手伝ってあげてください」
「私は結先生ではありません。『プリンの精』です」
あくまで自分は『プリンの精』と言い張る結先生。
「はいはい、分かりました。プリンの精さん、手伝ってあげてください」
もうその辺のことはどうでもよくなってきたので、軽く受け流す。
「では、カフェテリアの手作りプリンを」
「は？」
結先生の声にちょっと情けない声を上げてしまった。
「ですから、カフェテリアの手作りプリンを」
言い直す結先生。差し出す右手。
マダイウカ、コノヒトハ・・・。
久しぶりに殺意を覚えた気がした。
ごそごそ
なんか、衣擦れの音がする。そちらを振り返ると・・・。
ロータスが必死にパジャマを脱ごうとしていた。
パジャマの上を脱ごうと必死だが、上手くいかないのか生地が悲鳴をあげている。
下着もずり落ちそうで、それなりに膨らんでいる胸にどうにか引っかかっている感じだ。
というか、自分がストリップを披露しているじゃないか！
「はぇ、秋山さんって結構スタイル良いんですねぇ」
感心したように結先生が私の身体を見つめる。
「こら、ロータス。脱ぐのはゆっくりでいいから」
「んー、人間って面倒ですね・・・」
本当に面倒くさそうに、ゆっくりとパジャマを脱ぐロータス。
「結先生、お願いします。プリンでも何でも注文してください・・・」
観念したように私は結先生にお願いする。
「はい。プリンの恩を受けたからには、必ずや任務を全うして見せましょう」
その言葉に対する結先生の反応は早かった。
目をキラキラ輝かせながら私の手を取る結先生、もとい、プリンの精だっけ。
「次は？」
パジャマの上を脱ぎ終わったらしく、ロータスが声をかける。
「って、何で上半身ハダカですか！？」
顔を向けるとそこには、上半身に何も身に付けていない私が座っていた。
もう見飽きるほど見慣れた肢体が晒されている。
パジャマと一緒にブラも外れてしまったようだ。
「ちょっと、前！隠してよ」
「ん？」
ロータスは首を下に向けて、私の胸をまじまじと見つめる。
両手を胸に持っていくロータス。
「そうそう」
「あ、気持ち良いかも♪」
両手は胸を隠すために持っていったのではなく・・・。
それぞれの手でそれぞれの胸を揉んでいる。
手の動きに合わせて、両方のふくらみが形を変えていく。
「そんなことしなくていいから！」
思わず大声を上げてしまう私。
「んー、残念。私も女の娘なんですよ」
「それとこれとは話が別」
威嚇しつつ、ロータスに胸を隠させる。
ロータスは本当に残念そうに胸を揉むのをやめた。
「別に、女同士なんですからいいじゃありませんか」
完全に第3者の結先生が私とロータスをなだめた。
「気分の問題なんです」
どうにかロータスに制服を着せ終えた時は完全に遅刻の時間だった。
制服を着るまでの経緯は、18禁パラダイスなお話しに成りかねないので省略。
「さて、では学園に行きましょうか」
結先生はロータスの手を引くと出口に向かう。
「えへへー、楽しみ」
ロータスも嬉しそうだ。・・・が。
「ちょっと待ってください、私はどうすれば・・・」
結先生とロータスが行ってしまったら、私はどうすればいいのか。
「学園にペットの持ち込みは禁止ですから、ここでお留守番です」
その笑顔が悪魔に見えた。天使に見えていた頃が懐かしい。
「お留守番〜」
ロータスは、のん気に結先生の言葉を復唱している。
「ちょ、待ってくださいよー！」
私は必死に結先生にすがりつく。
「もう、しつこいですね」
私の行為に業を煮やしたのか、結先生は私に振り向くと。
「めっ！」
人差し指で私を指差しながら、キツイ一言。
「きゃ」
犬、というかロータスの習性だろうか、思わず目を閉じて伏せてしまう私。
瞬間、身体が浮いた感じがした。この部屋に来たときと同じだ。
そして目をあけるといつの間にか私は犬小屋にいた。
「行ってきまーす！」
その声に振り向くと、蓮華寮の玄関から出て行く結先生とロータスのうしろ姿が見えた。
「待って〜！」
私の遠吠えがむなしく響いた・・・。
あとがき
中身がロータスの委員長もいいかも・・・なんちて。